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2008年4月25日 (金)

ネスレ日本不当配転事件弁護団が声明発表

    

2008年4月19日

ネスレ日本不当配転事件弁護団

  

1 最高裁は、平成20年4月18日、ネスレ日本姫路工場配転事件について、会社側の上告を受理しない旨の決定を下した。

  本件は、同居の家族に要介護者を抱える2人の労働者に対する姫路工場(兵庫県姫路市)から霞ヶ浦工場(茨城県稲敷市)への配転命令の効力が争われた事案であり、神戸地裁姫路支部平成17年5月9日判決、大阪高裁平成18年4月14日判決、そしてこの間の2度の仮処分における神戸地裁姫路支部決定は、いずれも配転命令を無効と判断し、会社側がこれを不服として、最高裁に上告受理の申立を行ったものである。

2 神戸地裁姫路支部判決、大阪高裁判決は、「特に転居を伴う遠隔地への配転は、労働者に多大な負担を与えるものであるから、その不利益について十分考慮して行なうとともに、適正な手続を経て、公平に行なわなければならない」として、遠隔地配転を行なう場合は労働者の不利益を十分考慮するだけでなく、人事の適正な手続、公平さが要求される旨を明言した。更に、子の養育または家族の介護状況に関する使用者の配慮義務を定めた改正育児介護休業法26条を正面から取り上げ、同条の求める「配慮」を尽くしたか否かが配転命令の効力を判断するに際して重要な考慮要素となり、この点に関する使用者の配慮義務の懈怠が配転命令の効力を否定する方向で斟酌されることになる旨をも明言した。

こうした神戸地裁姫路支部判決,大阪高裁判決は、学説からも「最近では母親が要介護状態にあって妻が心の病を患っている労働者に対する、姫路から霞ヶ浦への配転命令が無効とされる高裁判決も出ています(ネスレ事件・大阪高判平成18・4・14労判915号60頁)が、これも家庭生活の重要性が裁判例においても徐々に認識されつつあることを示唆するものといえるでしょう。これまでは、共稼ぎ夫婦が別居を余儀なくされるような配転であっても、業務上の必要性が十分にあって、住宅や旅費などについて使用者が一定の配慮をしている場合には、なお配転命令権の濫用とは認められないとされていました(帝国臓器製薬事件・最二判平成11・9・17労判786号16頁)が、このような判断の中身も変わっていく可能性があります」と評価されているとおり(野川忍「労働法」199頁)、業務上の必要性があれば使用者は配転を命じることができ,当該配転命令は労働者が「著しい」不利益を被らない限り権利濫用にはならないという最高裁判例によって、これまで労働者側にのみ非常に高く設定されていたハードルを切り下げる契機となり得るもので、そのような判決を確定させたことは、最高裁自身が、これまでに確立してきた従前の配転命令に関する判断基準について変化の兆しがあることを自ら認めたと評価してよいものである。

3 ネスレ日本は、二度の仮処分、本案の神戸地裁姫路支部、大阪高裁、最高裁と裁判で5連敗し、配転命令を無効とする司法の最終判断が下された事実を重く受け止め、速やかに2人を姫路工場へ職場復帰させなければならない。弁護団は、2人の職場復帰を実現するために、ネッスル日本労働組合、支援共闘と連携し、最後まで必要なあらゆる手だてを尽くす。

4 また、企業は、今般の最高裁判決を踏まえ、「家族」をバラバラにしてしまうような遠隔地配転は決して企業の必要のみによって自由に行ないうるものではないこと、育児介護休業法により格別の「配慮」をなす義務を課されていることを、再認識すべきである。

弁護団は、労働者が、その「家族的責任」を果たし、人間らしい生活をすることが容易な社会、遠隔地配転、単身赴任が当然ではなくなる社会を形成するために、そのような社会を求める世論と連携して今後も奮闘する決意である。

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